開発の現場で活躍するのに必要なこととは?
西谷 智博
飯島 北斗
Q.PeS(当社)でお仕事をされるに至った経緯を教えてください。
私は創業メンバーです。創業までは、加速器向けの電子ビームの技術の研究開発と共にその実用化を構想していたところ、CEOの鈴木と出会って、より主導的にこの技術を世界に広めていくため、スタートアップとして会社を設立しました。
私は会社が設立される前から研究者の西谷と知り合いでした。ある時、凄い人に出会ったと言われ、その後も会うたびに「すごいことが起きる」と興奮しながら話していたのを覚えています。
徐々に伝え聞く話も起業に向けてより具体的なものになっていきました。そのころに今に引き継がれるプロジェクトにさそってもらい研究メンバーとして参加、2018年に社員として入社しました。
鈴木CEOは、当時、名古屋大学の産学官連携部門の技術移転マネージャーとして、この電子ビーム技術の企業へのライセンスなど通した事業化方法を進めていました。この技術の事業化を共に進める過程で、NEDO technology commercialization programという起業を考える人のトレーニングプログラムに参加してみようとなりました。そのプログラム内で行われた事業案コンテストで最優秀賞に選ばれ、より積極的な事業化策、自らの起業が最も適していると確信し、この会社の起業に至りました。
起業直後から、学術分野でしか利用されなかったこのようなハイテクには、その学術の先端で活躍する人材が不可欠と考えていました。そんな人は飯島さんしかいないと直ぐに至り、当時所属していた東京理科大学に鈴木CEOと一緒に何度も足を運んで口説き落としました。
Q.PeSでの開発研究のお仕事はどんな特徴がありますか?
技術の元になっている加速器の研究自体、アカデミアの中でもかなり特殊。 あらゆるものを自分たちの目で確かめながら作り上げるのが特徴です。
基本的な物理に基づいて、それ以外にも半導体フォトカソード、光学、表面処理、電子銃、高電圧など様々な要素技術を横断した視点がとても重要です。
多くの大手装置開発メーカでは、開発装置の要素技術ごとに分業化されています。そう言ったメーカでは、それぞれ開発チームが担当要素技術の性能を各々で高めていき、おおよそコンセプトができるといよいよ他の要素技術と統合していくすり合わせの開発プロセスを行うのが一般的だと思います。もっと言うと、多くの場面で、要素技術Aの開発チームメンバーは、要素技術Bを深く知らなくとも、担当技術のみの高性能化が可能だと思います。
一方で、半導体フォトカソード技術では、各要素技術の性能向上だけでは、良い電子ビームが得られません。各要素技術は電子ビーム化という接点で常に結ばれており、其々を融合して初めてとんでもない性能の電子ビームが実現されます。
本質的な開発には各要素技術の関わる物理を理解すれば良いのですが、難しいことを抜きに言うと、私は電源、私はレーザー、私は半導体担当だから他の要素技術は知らなくて良いでは本当の開発はありえないということです。 もっというとネジ一本でも材料から効果まで興味をもって改良・改善、研究する姿勢がPeSの開発スタンスです。
この考え方は、学術界でも見られ、特に私と飯島がいた加速器分野の研究開発スタンスが大きく影響していると思います。
宇宙・素粒子物理学を何年も学んだ何百人、何千人の研究者が、それぞれの専門分野だけでなく、ネジどころか果てはトンネルの掘り方や床の研磨まで研究対象にし、たった一つの目的である宇宙の誕生の謎解明に向かって、知らなかったこと、不具合や不都合、どんな障害もどんな手立てを使っても乗り越え、突き進む。それが加速器屋です。
新しく入ってきた人が驚く部分かもしれませんが、説明のできない“普通こうする”や“一般的な手立て”はほとんどが通用しません。本質の理解や実験データが全てとするのがPeSの研究開発の特徴です。
Q.チームで仕事をする時に大切にしていることは何ですか?
環境、雰囲気づくりです。
それぞれこれまで経験してきた環境は違うから、多かれ少なかれカルチャーショックは誰にでもあります。知らない、わからないのは当たり前とする寛容さがどの場面でも大事です。私は失敗のうち3割以上が称賛されるべき失敗だと考えています。不具合、不都合に直面しても、根本にある隠された課題まで見つけ出せれば、それは称賛されるべき失敗です。なぜならば、見つけた課題の解決策にこそ、まだ見ぬ素晴らしい電子ビームの要素が含まれるかもしれないからです。
適材適所。チームとしての仕事の仕方はまだまだ模索し続けるところ。
これまで経験してきたアカデミアでは個人営業の集団のようなところだったからかな。
その人の人格や特性を把握することから始めて、それに合わせて適切な仕事を任せるという方式が自分の関わっているプロジェクトには合っているように感じています。仕事をまかせっきりにしないで、失敗も予想しつつ目標が達成できるように予測することも大事だと思います。
最終的にここまで成長してほしいという仕事の範囲の中から、まずは経験したことのある部分を任せ、少しずつ預ける仕事の範囲を広げていくイメージです。
Q.仕事を通して大きく成長していけるエンジニアの共通点を教えてください。
仕事に興味を持っている人。
自分の業務だけをやるのではなく、ちょっとだけ自分が関わった部分に対して積極的に質問してきたり、調べたりしている人は成長していく要素を持っていると思います。
失敗や課題に対して、面白さを見つけられる人は大丈夫。
今は知らないことでも興味をもって時間をかけてでも調べられれば本人の知識や経験になっていくからね。
Q.PeSの技術で実現できる・したい未来と入社を検討される方に一言お願いします。
まずは半導体検査装置への適用、次は半導体の製造加工装置との適用とシェア拡大。世界に技術が広まったころには創薬、金属3Dプリンタ等、他分野へ広げていきます。もっと未来には源流の宇宙解明の謎に迫れるかも知れませんね。
刺激をたくさん受ける事ができる職場です。私、飯島以外に元大学の教員が複数いますので、大学の講義レベルの学びがごろごろ転がっている職場です。事業会社経験の方もですが、アカデミア経験がある方も勿論ウェルカムです。
半導体フォトカソード電子銃が世界のスタンダードになることです。「まだ半導体フォトカソード電子銃使ってないの?」みたいな。アカデミアの加速器の業界ではすでに起こったことだけど、同じようなことが産業化によって世界のあらゆる分野に起こると確信しています。
日々臨機応変なところが多いですが、それを楽しんでもらえるようなバイタリティ溢れる方の応募をお待ちしてます。
関連記事